モータウンから来たゴールデン ガール、
ライアン・デスティニー

女優の道へも乗り出した歌手が、セルフィーとDMを語る

  • インタビュー: Zoma Crum Tesfa
  • 写真: Ryan Destiny

成功が期待される新進気鋭の女優であり、ミュージシャンであり、インターネットのアイコンであるライアン・デスティニー(Ryan Destiny)は、地元ミシガン州デトロイトの黄金期を彷彿とさせるエンターテイナーだ。彼女にとって、モータウンのルーツは今も健在である。「ほんとに才能が溢れてる場所よ。いつだって音楽がある。デトロイトのような場所に生まれて、すごくインスパイアされるわ」と、彼女は言う。ガールズ グループNew Limitのメンバーとしてテレビのコンテスト番組「America’s Got Talent」に出場し、初めての大きなチャンスつかんだが、後に番組を辞退して、今やリー・ダニエル(Lee Daniel)の新しい連続テレビ ドラマ「Star」でデビューを飾ろうとしている。芸術が現実を模倣する珍しいケースだ。デスティニーが演じるのは、音楽界で売り出そうとする3人の歌手のひとり。番組の脚本家たちでさえ、舞台裏のドラマを現実に忠実に描こうと、彼女に助言を求め始めた。だが彼女は、夢のような事の成り行きを神の恵みだと受け止めている。「きっと理由があって、神様は私の人生に夢のような話を授けてくださったんだと思う」

曖昧になる現実と虚構の境界線とスターの卵に来る複雑な直メールについて、デスティニーとゾーマ・クルム-テスファ(Zoma Crum-Tesfa)が対話した。

ゾーマ・クルム-テスファ(Zoma Crum-Tesfa)

ライアン・デスティニー(Ryan Destiny)

あなたは、ガールズ グループのメンバーとしてスタートしましたね。そして今は、リー・ダニエルのテレビ番組「Star」で、ガールズ グループのメンバーの役を演じる。実際の人生をフィクションという形で再現するのは、どんな気分でしたか?

初めて脚本を手にしたとき、そのせいで迷ったことを覚えてるわ。私はずっと、ガールズ グループのメンバーになりたかった。友達といっしょにグループを作って、楽しもうって思ってたの。私の頭にあったのは、仲間、仲良しの友達、女性のエンパワーメント。互いにサポートしあう姿を女性たちに見せる、ガールズ グループのそういうところが好きだったのよ。だけど、メンバーが気の合う人じゃなかったら、すごくおっかないし、色々と問題が起きるわ。当時の経験は、間違いなく今の役に立ってる。番組は上手くいってるわ。脚本の段階で、ガールズ グループでの私の経験を参考にしてくれたからね。私の経験を入れて、番組をリアルにしたのよ。

気持ちが整理できたでしょうね。

きっと理由があって、神様は私の人生に夢のような話を授けてくださったんだと思う。それに、今は、ソロで音楽もできるようなったわ。

ガールズ グループは、なぜか内部崩壊するみたいですね。女性だからだ、感情的で意地悪だからだ、と言う人がいますが、それは偏見です。女性のミュージシャンには、すごくプレッシャーがあります。

まさにそう。ボーイズ グループのほうが楽よ。先ず、ガールズ グループに入るにはもっと競争が激しいわ。男の子の場合、かわいいだけでOK。ちゃんと歌う必要さえないの。ステージに上がるだけで、みんな熱狂して、どんな曲でも買ってくれる。でも女の子が音楽をやるのは、もっとはるかに大変なことよ。

みんなと
一緒でなかったら、
頂上には辿りつけない

それにガールズ グループは、四六時中とにかく最高にクールでなきゃいけない。半分は食べ物を気にして、もう半分はエクササイズして、おまけにスタイリストにヘアにメイクのチーム。四六時中いじり回されて、どうやって人間らしい関係を持てるんですか? そんな時間、どこにあるんでしょう?

そう、狂ってるわ。私が好きじゃない部分よ。全然好きじゃないわ。

でも「Star」での役は、いわば「恵まれた家に生まれた」人物ですね。

私とは全然違うキャラクター。というか、私と正反対。彼女はニューヨーク出身で、恵まれてて、そう、お高くとまっているの。あのキャラクターを演じるには、想像力が要るわ。

あなたのお気に入りガールズ グループを5つ教えてください。

素晴らしいグループはすごくたくさんあるけど、今のトップ5はTLC、トータル(Total)、SWV、デスティニーズ チャイルド(Destiny’s Child)、スプリームス(Supremes)。

リー・ダニエルズも、TLCからインスパイアされると話していました。なぜ、TLCは現在も影響を持ち続けるのでしょうか?

本物だったから。3人がそれぞれ違ってて、それぞれ個性があって。3人とも違うタイプだったけど、理解できるものがあったわ。クレイジーな人とセクシーな人とクールな人。それも、やらされてたわけじゃなかった。良いときも悪いときも、ずっと仲良しだったのが分かるもの。メンバーのあいだに絆があったから、今でも強い絆で結ばれたファンがいるんだと思う。音楽も良かった。

あなたのインスタグラムは、とてもスタイリッシュな写真が満載ですね。見せられない影の部分もあるはずだと思うんですが、世間的には刺激が強すぎるかもしれないから、プライベートだけで楽しんでるスタイルはありますか?

私は、自分のすることは全部見せてるわ。

そうですか…。

ただ正直に言うと、ドゥーラグは笑えるし、大好きなもののひとつなのよ。また流行ればいいのに! 自分でも何回かやってみたけど、リバイバルしたら、大歓迎するわ。

じゃ、ターバンはどうですか?

ターバン(笑)? うーん、どうだろう。ちょっと違うわね。

確かに。同感です。それはさておき、若くてホットなスターの卵で、インスタグラムも盛り上がるというのは、とても幸運なことですね。リアーナの「Sex With Me」には「あなたの誘惑に惹かれて、インスタグラムもしないで、夜が更ける…」という歌詞がありますが。

何であれ、リアーナと私を比べ始めるのは厚かましいと思うけど。でも、私のインスタグラムは、今盛り上がってるわ。

車の横に立って
服を見せてる投稿でも、
自分以上に見せようと
している人かどうか、
私には分かる

最近もらった直メールで、何か面白いものはありましたか?

いちばん最近のは、女の子から来たリクエスト。人の写真を使って「なりすまし」をやるのが流行ったの、覚えてる?

ええ。

その女の子は、それをやっていいかって私に聞いてきたの。トイレットペーパーを持ってる私の写真を送ってって。今まででいちばん奇妙なリクエストだったわ。

直メールを使ってあなたに忍び寄ってくる男性たちに、何かアドバイスはありますか?

その男性次第ね。それと写真のクオリティ。

写真のクオリティって、どういう意味ですか?

私が見るインスタグラムは、結局、人柄に行き着くのよ。例えば、車の横に立って、自分の服を見せてる投稿でも、自分を自分以上に見せようとしている人かどうか、私には分かるわ。それから、ほんとに素敵な人かどうかも分かる。似たようなタイプに見えても、写真でもっとよく伝わるの。ありのままが一番だわ。

リアーナと私を
比べ始めるのは
厚かましい

今ニューヨークにいるのは、どうして?

明日、「Wendy Williams Show」に出演するの。

レミー・マ(Remy Ma)とニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)のディスり合いについて、コメントを求められるかもしれませんね。

彼女たちがやり合っているのは見たけど、問題の曲自体、私は聞いたことがないの。でも、ふたりとも大物だわ。こんなことになるなんて、面白いと思う。

どうしてですか?

ヒップホップのカルチャーの一部だもの。起きて当然だわ。昔はもっとそういうことがあったと思うけど、今起きると大ごとになるのよ。ヒップホップがメインストリームになった証拠だわ。

あなたのホームタウンのデトロイトにとても興味があります。今、あそこでは何が起きているか、教えてくれますか?

私たちのコミュニティでは、いつも何かが起きてる。私が知ってる人は、ライターやアーティストだけど、ほとんどの人がいつも何か新しいことをやってるわ。ほんとに才能が溢れてる場所よ。いつだって音楽がある。デトロイトのような場所に生まれて、すごくインスパイアされるわ。みんな等身大で、気取らないで、誇りを持ってる。私たちほど自尊心のある人に会ったことなんてないわ。それは、何もないところからみんなで這い上がってくるからだと思う。みんなと一緒でなかったら、頂上には辿りつけないもの。

いろんな意味で、アトランタは現代のモータウンだという印象があるんですが、アトランタで「Star」を撮影して、あなたの音楽やスタイルに何か影響がありましたか?

どんな影響があったのか、自分でも分からないわ。アトランタの音楽がずっと好きだったし。独特のスタイルがあるのよ。アトランタの人たちって、みんなすごくクールで、ヒップ ホップでもR&Bのカルチャーでも、最新のことをキャッチするの。私が一番影響を受けたのは、あそこのダンスね。いろんな振付師といっしょに仕事をしたけど、みんな文字通りアトランタに入れ込んでるわ。そして、音楽と組み合わせたダンスに影響を与えてる。アトランタでは、音楽とダンスが切り離せないのよ。

現在は、映画でもテレビでも、非常に多くの素晴らしいプロジェクトを黒人が指揮しています。そういう時代に、若い黒人のエンターテイナーでいることは、どんな感じですか? 今でも葛藤があることは知っていますが、エンターテイメント業界は間違いなく変化しつつあるように見えます。

葛藤は、今でも絶対あるわ。若いと、そういうことに気付きもしないで、通り過ぎちゃうの。私だって、何年か前までは気付かなかった。業界に入って、違う扱いを受けて、違う見方をされて、人の10倍も自分の力を証明しないといけない。私は、壁を壊して、肌の色や人種に対する人の態度を変えたいわ。この業界でそれをやってるパワフルな黒人がたくさんいるのは、ほんとに素晴らしいと思う。私自身は、まだ試練を通過中よ。

でも、あなたが「America’s Got Talent」を辞退したり、物議をかもすインディペンデント映画や音楽をやるのを見て、若い黒人女性にとっては、大きなインスピレーションになったんじゃないかと思います。

ありがとう。実際のところ、闘いよ。幼い黒人の女の子たちが私に書いてくるの。肌の色や、メディアが売りつけるイメージのせいで、どれほど自分に自信が持てないかって。そんなの、まともじゃないと思うわ。私も昔は、そんな頼りない女の子だった。だから、今影響を与える立場になれたのは、すごく素晴らしいことよ。テレビに出て、それを見た他の女の子たちが尊敬できる存在になって、その結果、彼女たちが自分をもっと好きになれる。私は、このメッセージをずっとずっと繰り返して伝えていきたいの。

  • インタビュー: Zoma Crum Tesfa
  • 写真: Ryan Destiny
  • スタイリング: Scot Louie