アシュリー・ウィリアムズのロンドン案内
イギリスのデザイナーが青春時代のたまり場を案内する
- 写真: Angelo Dominic Sesto
- 文: Lauren Norling

デザイナー、アシュリー・ウィリアムズ(Ashley Williams)は、キャリアが世に認められるようになっても、まだその魅力的な子どもっぽさを失っていない。彼女が自分の庭だという大都市ロンドンを動き回るとき、その子どものような軽快さがはっきりと浮かび上がる。

ウィメンズウェアを学んで、才能あふれる独立デザイナーの登竜門として知られるファッション イーストでいくつかのシーズンを発表した。その後、すぐに彼女の名前は、若々しい女性らしさをもつ多様なスタイルが融合したブランドの代名詞となった。
5年を経てなお、彼女と同じように「年齢相応の」格好をすることなど眼中になく、それどころか明るく自己表現を続ける女性たちの間で、ブランドは共感を呼び続けている。ウィリアムズの作品に見られるポップカルチャーとY世代への傾倒は、変化の時期に耐えるロンドンの空気をうまく捉えている。今回、その彼女が、隠れた穴場からありふれたスポットまで、ロンドンの宝石の数々を案内する。
Marshall Street Leisure Centre — ソーホー地区、マーシャル ストリート15番地

ウィリアムズがロンドンで暮らし始めて数年が経った頃、同僚から初めてマーシャル ストリートにあるこの場所を教えてもらった。ソーホー地区の中心、ロンドンで最も人が多い場所に隣接しながら、どういうわけか、今なおこのセンターは人知れぬ穴場のままだ。それが、この場所が特別な理由だ。誰もここのことを知らない。カーナビー ストリートから少し入った所にある大した特徴もない建物が、1931年に建設された運動施設へと通じている。アール デコの丸天井に大理石の床と、豪華な雰囲気の中で夜の水泳が楽しめる。
Namco Funscape — ランベス区、ウェストミンスター ブリッジ ロード

ロンドンで育った子どもたちのほとんどが、トロカデロやファンランドによく遊びに行っていた。ウィリアムズも熱心にトロカデロに通うひとりだったが、トロカデロは閉鎖されてしまった。とはいえ、閉鎖される何年も前から往年の魅力を失っていたことは、まず間違いないのだが。今、その子ども時代の思い出を蘇らせてくれるのが、ナムコ ファンスケープだ。数々の有名なランドマークのすぐ横のアミューズメント施設、という頭がクラクラするような立地には、大の観光嫌いでも畏敬の念を抱かざるをえない。ウィリアムズにとってナムコ ファンランドはタイムトンネルの入り口のようなものだ。2階建のゲームセンターが、無邪気なネオンの光が映し出す未来という形で、過去へと導いてくれる。
Norman’s Coach & Horses — ソーホー地区、グリーク ストリート29番地

ここはウィリアムズがビールを一杯飲むお気に入りの場所だ。パブはロンドン中いたる所にあるが、Coach & Horsesのように容易に他と区別のつくパブはほとんどない。ロンドン初のヴィーガンでベジタリアンのパブとして名高いCoach & Horsesは、フィッシュアンドチップスで知られる業界に、現代的な選択肢を提供する。伝説的な元オーナー、ノーマン・バロン(Norman Balon)は、ロンドンで最もひどいパブ経営者として悪名高く、彼の引退後もその伝説は広く知られている。イギリスの誇る著名作家で誰もが知る大酒飲み、ジェフリー・バーナード(Jeffrey Bernard)も、ディラン・トマス(Dylan Thomas)などと同様、このパブに足繁く通った。このレガシーによって作家やジャーナリスト、ロマンチックな芸術家タイプの人々のお気に入りの場所となり、 多くの人がここをロンドンで最後の「正統な」パブのひとつと考えるようになったのだ。
Bar Italia — ソーホー地区、フリス ストリート21番地

ウィリアムズは以前、友人とこの近くのカラオケ店に通っており、喉がかれるまで歌うと決まってBar Italiaに行った。「カラオケのあとでBar Italiaに行って、パニーニを食べて、酔っ払って、ただ遊んでた。若い頃は、週末になるとほぼ毎週ここに来たものよ」。1949年に開業し、何度か改装が行われたが、創業当時の姿を取り戻すことは決して叶わない。レトロな内装は荒廃と紙一重で、昔懐かしいぬくもりと魅惑的でくつろいだ雰囲気を醸し出している。
The French House — ソーホー地区、ディーン ストリート49番地

ウィリアムズが次に訪れたのはThe French House、フランス愛好家のパブという一風変わった場所だ。彼女はここの幅広いワインのセレクションとフランスのりんご酒の豊富な品揃えが気に入っている。深紅色の壁一面に白黒写真と金箔の額縁の鏡が掛けられ、パリの雰囲気に一役買っている。多くのバーやレストランで、大音量の音楽と過剰な生演奏が必須となっている中、そうった圧力に屈しない。これがまさにThe French Houseは高い評判を維持している理由だ。ここでは音楽やテレビ、iPhoneの利用が堅く禁じられており、現代のデジタル社会から一時の解放を楽しめる。また、物思いにふける知識人が古き良き時代を懐かしむには最適のパブだ。
自然史博物館 — サウス ケンジントン地区、クロムウェル ロード

自然の大聖堂とも表現される自然史博物館は、その当時、全く新しい建築方法によって建てられており、今なお、イギリスにおける最も印象的なロマネスク様式の建築として知られている。V&Aやサイエンス ミュージアム、ロイヤル アルバート ホールの立ち並ぶ、サウス ケンジントンのエキシビション ロードにあり、世界で最も評判の高い研究センターのひとつだ。だが、クリスマス期間中オープンするアイススケート リンク場として知る人の方が多い。「私は石や結晶や鉱物なんかが好き」とウィリアムズは言う。「前のシーズンでは、恐竜の骨格を使ったグラフィックも作ったわ。博物館はインスピレーションの源であり、ただ楽しむために行く場所でもある」
ヘイワード ギャラリー— サウスバンク センター


サウスバンク地区でテムズ川沿いを歩いていると、屋根からピラミッドが突き出し、建設途中で打ち捨てられたかのようなコンクリート スラブの広がる建物にぶつかる。ヘイワード ギャラリーと呼ばれるこの建物は、ブルータリズム建築の典型だ。ギャラリーは、フランシス・ベーコン(Francis Bacon)からブリジェット・ライリー(Bridget Riley)まで、多大な影響を与えた芸術家やパイオニアの作品を展示することで知られ、この場所にインスピレーションを求める人々が足を運ぶ。ギャラリーは改装のため2018年まで閉館中で、リニューアル オープンに期待が高まる。ブルータリズムの建築にどのような現代的アプローチがもたらされるのか楽しみだ。
Lauren Norlingがニューヨークを拠点とするライター。インドに滞在することもあり、そこからHarper's BazaarやELLEにも寄稿している
- 写真: Angelo Dominic Sesto
- 文: Lauren Norling