セルフィーのオアシスへ: India Roseとのマラケシュ

スタイリスト、フォトグラファー、そして旅人である彼女が、自らのスタイリングでSSENSEのために撮影を行ったモロッコの旅

  • インタビュー: Elisa Schwalm
  • 撮影: India Rose

India Roseは、場所へのこだわりが人一倍強い。彼女がそうであるように、写真家(彼女の職業のひとつ)なら誰しも、ある場所でしか手に入らない光を必要とすることがどういう意味かわかるはずだ。それを物にするには旅をするしかない。そして今回、その旅はモロッコだった。彼女は、モロッコの景色を撮影し、Wales BonnerJacquemusHomme Plissé Issey Miyakeに身を包んだ自身の姿もカメラに収めた。ちゃめっけ溢れるIndia Roseのセルフィーの隅に見えるムラービト朝の建築は、Roseが身にするスケートスタイルの美しさにも匹敵する。

iMessageを使って今回の旅のスナップショットをシェアしてくれた。聞き手は、SSENSEのElisa Schwalmが務めた。

Elisa Schwalm

India Rose

Elisa Schwalm: モロッコ! 今回が初めてですか? モロッコのどこの街へ行ったのか教えてください。

India Rose: モロッコは今回が2回目で、どちらもマラケシュ。それからアムステルダムへ向かう途中に、砂漠を越えてカサブランカへ行ったわ。

今回の旅で、何か新しい発見はあった?

初めて行ったときは、かなり若かったから、モロッコの文化のことをよくわかっていなかったわ。その場にふさわしい格好をして、地元の人との接し方も心得ていれば、スゴくいい時間を過ごすことができるわ。わたしは80%も物々交換の腕が上がったわ。今回は、値切って欲しいってカップルにお願いされたの。

旅のいちばんの値段交渉は?

友だちと連れ立って、自分たちのためと、私たちのボーイフレンド、そしてガールフレンドのためのプレゼントを希望の値段で手に入れようと頑張ったの。たぶん4回ぐらい、交渉は決裂したけどね。

ロンドンにいるときの服装と、モロッコにいるときとでは何か違いはある?

マラケシュは他の場所とくらべてもかなり自由だけど、それでも他人の信仰には敬意を払う必要があると思うわ。肩を露出させないとか、短いスカートやワンピースは避けるとか。短いパンツの方がふさわしいと思う。ラッキーなのは、私はだいたいボーイッシュな服装をしているので、そんなに問題にならなかったことね。あと、撮影する場所には気を使わないといけないから、プライベートな場所とか自分のリヤド(モロッコの伝統的な住宅を改装した宿)を使うようにしたわ。

モロッコは色で溢れているけど、自分が身に付けるアイテムを選ぶのに、それが影響したと思う?

どこもかしこも褐色なの。でも、光はとてもロサンゼルスに似ていると思う。マラケシュに行く前、 ロンドンに数ヶ月間いたから、それで自分の服にもっと色を足したいって気にさせたの。暑さとか、地元の人たちへの配慮とか、あとはホコリ、そういうのが混ざり合ってる。とにかくホコリがすごいの。どこへ行っても。

それはたいへんね。私には想像できないけど。きっと、思ってた以上にホコリを吸い込んだでしょうね。

ははは。しばらくは咳に悩まされたわ。白い服を着ている場合は、ぜったいにどこにももたれかからないように気を付けてた。それに、暑さのせいで着ているものを全て脱ぎたくなったりもした。Wales Bonnerのツーピースがいちばんいいんじゃないかな、マラケシュで身に付けるには。

今回の旅で、いちばん重要だったアイテムを選ぶとしたら?

Homme Plisséのトラックスーツが旅には最適ね。気温の変化にも対応できるし、スーツケースに放り込んでおいてもシワにならないし。プールに行くときとかスーク(市場)を通ってレストランに行くときとかに、ちょっと羽織るのはいいわね。Jacquemusの片側の肩が出たシャツとかビキニの上だとかにちょうどいい。

生地がいいよね。手間がかからないから。旅をするのがずっと楽になる。

楽なのがいちばん。いつでも。私はアイロンが苦手なの。

ははは、それは私も。ところで、旅ってあなたの創作活動にどんな影響を与えているのかな?

わたしが何かを作るときに、旅はなくてはならないほど大切なもの。今年の冬はずっとロンドンにいて、それが自分の仕事にかなり影響したわ。ひとつの場所にそんなに長くとどまることなんて、めったにないことだから。いろんな場所や文化に触れて、道行く人の服装を見て、ギャラリーに行ったり、自分にとって快適な場所から抜け出したりすることで、アイデアがどんどん湧いてくるの。心地いい光やきれいな建築も助けになる。わたしは、絶えず完璧な壁を探してるの。

ロンドンにいないときに、ロンドンでの撮影が恋しくなることはないの?

全然ないわ。いつもロンドンのことは恋しいと思ってるけど。だから、そのためにはもっと旅をするしかないの(編注:泣き顔の絵文字)。ロンドン以外でやった仕事の方が、私はだいだい好きなの。

それは、新鮮だから? 毎日生活してる場所じゃないと、新しい目線で見ることができるからね。

ここでやりたいプロジェクトと、海外でやりたいプロジェクトのバランスを取るようにしているの。けれど、いちばんの問題は光だと思う。ロンドンには良い光がないのよね。それに、夏はいつもどこか遠くに行ってるから。

2015年に、リアルや本物であることについて話を聞いたけど、2016年になって何か変化はあった?

先週、PRの仕事をしている人に会ったんだけど、スゴく元気づけられたわ。わたしとほんとに同じ考え方で、キャンペーンでも人付き合いでも、彼女は本物かどうかをとても気にしているの。次の世代は、ブランドがリアルかどうかを簡単に見抜くことができると思うの。

ここ数年でソーシャルメディアや、インターネットのプラットフォームに対して変化はある? あなたは、ブログから距離を置いて、よりインスタグラムへと移行しているようだけど。

ブロガーになろうなんて思ったことは一度もなかったし、結局、自分が望んでいるようなものではなくなったの。わたしが始めたころは、ブログでお金を稼ぐなんて考えもしなかった。今、ブログをやるってことは2007〜2008年の状況とはまったく違っていて、とりたてて賛同できるようなものではないわね。好きでもないものを、どこかの会社の利益のために宣伝や販売なんかに力を貸すのはいいことだとは思わない。それより、内容の方がわたしには重要で、それはブランドにとっても同じことだと思う。単にフォロワーが多いのと、きちんと影響力があるというのは別物だから。

インスタグラムは気に入ってるけどね。しゃべり過ぎることなしに、たくさんのことを伝えられて、クリエイティブにもなれるし、とても良い手段。写真を撮るのは好きだし、インスピレーションを得るにも仲間と繋がるにも良いプラットフォームね。

今や、ブランドからものをもらったりお金をもらったりしたいがためだけのブロガーであふれているけど、わたしはそれ以上のことを言おうとしている人たちに関心を持っていますね。

それは、間違った動機で始めちゃった人たちね。わたしは洋服が好きだけど、ファッション業界からは距離を置くようにしている。難しいわね。特定の人といっしょにいることは極力避けているわ。インスタグラム上ではそういうことをやっているけど、ほかに写真もやったり、ブランディング、クリエイティブ・ダイレクション、スタイリングなんかもやってるわ。自分の可能性はオープンにしておきたいから、インスタグラムはその点とても良い方法だとわ。自分の肩書きが何なのか、いまだにわからないけど。

ははは。肩書きはやっかいだからね。

うん、難しい。自分のことをクリエイティブ・ダイレクターとか写真家とかスタイリストだなんて、その分野で仕事をしている自分の好きなアーティストの前でぜったい言わない。そんな人たちと自分を比べることすら考えられない。わたしは、器用貧乏ってとこかな。

いいわね。

キャッチーでしょ? きっと、いつか何か思い付くだろうけど。まだ時期尚早ってとこかな。

人から受ける影響か、場所から受ける影響か、どちらが強いと思う?

場所。人は場所にいるからね。(編注:ウィンクの絵文字)

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